彼女の名前は沙織。僕たちは、大学のサークルで出会ってから、お互いに惹かれ合っていた。
ある日、彼女から「今日、駅前のカフェに行かない?」と誘われた。
「いいよ!」と返事をすると、彼女は笑顔で微笑んだ。
カフェに入ると、彼女はいつもは頼まないような、高級そうなケーキを注文した。
すると、彼女は言った。
「私、もうすぐ卒業なんだ。就職しようと思ってるけど、なかなかうまくいかなくて。先輩たちと比べちゃうと、私って何もできないんじゃないかって思っちゃうんだ。でも、あなたがいてくれると、心強いの。」
心の中で、彼女をほめたまえとつぶやいた。
「沙織、お前はがんばってるよ。自分と他人を比べたら、自分は負けるよ。お前はお前。自信を持って、がんばればいいんだよ。」
「ありがとう、僕にはあなたが必要なの。」と、彼女はにっこりと笑った。
二人で時間を過ごす中で、彼女との距離がより縮まった。
彼女の髪から漂う芳しい香り、彼女がくすぐったがりな所作、可愛らしい仕草。
秋はもう終わりかけていた。
ある日、彼女から「先輩から、秋の終わりに手紙が届いたんだけど、読ませてくれないかな?」と頼まれた。
「えっ?なんでそんなもの、先輩に渡してもらわなかったんだ?」と聞くと、彼女は恥ずかしがりながら言葉を続けた。
「先輩に会えなかったから、手紙を送ることになったの。でも、私はその手紙が怖くて、読めなかったんだ。だから、一緒に読んでくれないかな?」
僕たちは、カフェでゆっくりと時間を過ごしながら、手紙を読んでいった。
「私は部屋に帰ると、あなただけを思って涙を流していた。大切に思う人には、大切に思っている(※詩人の言葉を借りました)。秋の風に揺れる木の葉、その音が聞こえるようだった。この風景を、あなたに伝えたい。」
手紙を読み終わると、彼女は泣き始めた。
「先輩、会いたかった。会いたかったんだ。私ががんばっていること、ここまで成長したことを、見てほしかった。でも、見てもらえなかった。」
彼女の涙を見て、僕は彼女を抱きしめた。
「大丈夫、ここで一緒にいよう。今、この瞬間こそが、大事な時なんだよ。」
僕たちは、ハチミツ色の秋の終わりに、それぞれが過ごしてきた日々を振り返りながら、静かなカフェで過ごした時間を、大切に思うようになった。
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