私たちは夏休みのために、母の実家に帰省することになった。
実家は山の中にあって、私たちが住んでいる都会とは全く違う景色が広がっていた。山の麓には、昔から続く神社があり、夏の風物詩であるお祭りも行われていた。
その日、私たちは夕方から行われるお祭りを見るために、神社へ向かった。
お神輿が町を練り歩く中、私たちは人間の海の中にいた。周りからはお祭りの歌が流れ、子供たちの笑い声も聞こえてきた。
しかし、私はどこか心細く感じていた。母の実家には住む場所があり、家族や親戚もいたが、私には帰る場所がないような気がしていた。
そんな中、何かにぶつかった感覚があった。私が目を向けると、そこには同じ年頃の男の子が立っていた。
「ごめんなさい、大丈夫ですか?」と男の子は尋ねた。
そこで私たちは話をするうちに意気投合し、以後毎日一緒に過ごすようになった。
男の子の家は町の中心にあって、私たちが住むようなフラットタイプのアパートだった。しかし、そこに座っていると、何とも言えない居心地の良さを感じた。
夏休みが終わる頃、私たちは互いの住まいに戻ることになった。
私は再び山の中の祖父母の家に帰るが、心細さは感じなくなっていた。
それ以来私たちは、年に一度程度だが、お互いの家に遊びに行ったり、手紙をやりとりするようになった。
私にとっての「帰る場所」は、彼と出会うまで見つからなかった。しかし、私にとっての帰る場所が見つかったということは、今後の人生にとっても大切なことだった。
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