短編小説

「迷子の鍵」

私はいつものように、帰り道で携帯をいじりながら歩いていた。しかし、何か違和感を感じた。肌寒くなってきたかと思ったが、それ以上のものがある。

その時、見覚えのない家の鍵を握りしめていることに気づいた。私は自分のカバンを探ったが、そこには自分の家の鍵しかなかった。

鍵はどこから持ってきたんだろう。その家に返しに行くべきか、それとも警察に渡すか、迷いに迷い、迷っているうちに目に留まった人がいた。

それは捜索願いが出ている迷子の子供だった。私は鍵を渡そうと近づいた。

「これ見つけたよ。警察に言ったほうがいいかな?」

子供は高齢者に似たおじいさんに引っ張られながら、私をにらみつけた。

その時、おじいさんが言った。

「それ、うちの鍵だ」

私が眼が醒めるようにして目を見開くと、おじいさんは私に向かって笑顔で鍵を受け取ると、挨拶をしてその場を去った。

私は後ろ髪を引かれる思いで、その場を立ち去った。


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