失われた記憶

ある日、私は自分が何か忘れていることに気づいた。

どうしても思い出せない。時間も場所もわからない。ただ、何かが欠けている気がしてならない。

それでも、日常は続いていく。仕事に行って、友達と会って、暮らす。でも、いつもそこかしこで、何かを感じていた。

「きっと、私は今までの記憶を失ったんだわ」と、ある日思い立ち、整理することにした。

家中の引き出しや箱を開け、写真や手帳、書類などを一つずつ見ていく。

すると、ひとつのフォルダが目に留まる。名前は分かった。でも、どういうものだったか覚えていない。

フォルダを開くと、昔の手紙が入っていた。見慣れない文字だけれど、いつもの場所にしまってあった。大切なものだったのかもしれない。

手紙を読むと、そこには大事な人へのお祝いの言葉が書かれていた。そして、私の名前だけがなかった。

そうか、私はその日に参加した記憶を失ってしまったのか。何かの拍子に脳がリセットされたように。

思い出せないことが、苦痛や不安を引き起こす場面は多くない。私は今の自分を受け入れる。それが、私がなくてはいけないものだったのかもしれない。

そして、私は心に強く刻んでいく。失った記憶より、今やっていることや出会っている人が、私の原動力となるということを。


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