「もうパン屋をやめるわ」
そうつぶやくと、店主の目からは悔しさと無力感が滲み出ていた。
ひとりの客が注文したキャロットケーキが焦げ付いてしまった。失敗してしまったのだ。
傷心の店主は、ケーキを無言で捨て、板を洗い、ドアを閉めた。
今までの辛い努力もふいに飛んでしまい、やめるか続けるかの選択が脳裏を駆け巡った。
それから3日後、老夫婦が店に入ってきた。彼らは、地元新聞に掲載された「美味しいパン屋を探しています」という広告から来たのだ。
「何かおすすめのパンはありますか?」と店主に尋ねる老婦人に、彼女はオススメの特製パンを勧めた。そして、彼女はパンを食べた後、涙ぐんで店主に微笑みかけた。
「美味しいわ。あなたから買えば、美味しいものが手に入ると信じていたの。1つの失敗で、パン屋を閉めるのは惜しいわ。」と彼女は語った。
その言葉がきっかけで、店主は再び自信を取り戻し、一生懸命努力してパンを作り続けた。
そして、彼女の失敗は、彼女が改善しようと努力する勇気を与えた。
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