タクシードライバーの夜

彼はいつものように、深夜にタクシーを運転していた。

路上は静かで、街灯が揺れる様子が彼を落ち着かせた。

しかし、ここ最近は何かが違う気がしていた。

それは彼の車内に乗り込む客たちも変わってきたこと。

彼が苦手とする酔っ払いや、喜怒哀楽の激しい人々が減り、代わって、変わった種類の客が増えていた。

「三丁目の角で降ろして」

乗客は穏やかに言った。

彼はスイッチを入れたまま、安全な場所で車を止めた。

すると、乗客が椅子から立ち上がり、後部座席に積まれていた荷物を取り出した。

「今日はありがとう。いい夜を過ごしてね」と乗客は笑って、車から降りていった。

彼は運転席に戻り、後部座席から取り残された小さな黒い箱を見つけた。

箱を開けると、そこには一通の手紙が入っていた。彼は手紙を開き、次のように書かれていたのを読んだ。

「タクシードライバーさんへ

私はこの街の人々のうちの一人です。
私たちはあなたがこの街で働いている姿をいつも見ています。
私たちはあなたをとても大切な存在だと思っています。

この小さな黒い箱は私たちがあなたに贈り物です。
この街で働くあなたのために、私たちが「ありがとう」と伝えたいからです。

今晩は、私たちの心からの感謝を込めて、この贈り物をあなたに手渡したいと思いました。

私たちはあなたがいつも安全に運転してくれることを祈っています。
あなたがこの街で働いている限り、私たちはいつでもあなたを応援しています。

ともに、この街で生きていきましょう。

あなたに幸あれ」

彼は感動した。彼がこの街で働くことが、人々にとってどのように重要な存在なのか、初めて知った。

そして、彼はこの小さな黒い箱を大切にし、自分ができる限り、この街で働き続けた。


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