失われた時間

私は幼い頃から大好きだった林の中を歩いていた。毎週のように、家から自転車に乗ってやって来る。林の入り口には、立派な看板が建っていた。
「森林公園」と書かれていた。

林の中は静かで、緑色の葉っぱや、花が、心地よい香りを放っていた。私は感嘆しながら、目的地である小さな池で足を止めた。鯉が泳いでおり、プカプカと波紋が広がっていた。

私はひとしきり鯉を眺めて楽しんだ後、池の周りを散歩することにした。しかし、いつもの道が見つからず、あちこち迷い込んでしまった。

何度も何度も同じ場所を行ったり来たりしていると、「あれっ、この景色見たことあるような」と思った。寂しさが募り、怖くなり、私はパニックに陥った。何かが私を追いかけているような気がして、池の方へ向かって走った。

すると、目の前に、小さな木の屋根があるお店が現れた。看板には、「Lost Time Cafe」と書かれていた。

私はお店に入ると、時間を忘れるような美味しいコーヒーや、スイーツを食べながら、安心感に浸った。すると、突然、店員が私に話しかけてきた。

「いいお客様、あなたの心配は無用ですよ。ここに来た者は、皆同じように迷子になってしまったのです。でも、ここに来ることで、人生が大きく変わった人もいます。あなたもそうなるかもしれませんよ。」

私は不思議な気持ちで、お店を出た。すると、池の横にあった道が、グルッと曲がっていたことに気付き、スッキリとした気持ちで家に向かった。

それから、私は少し時間をかけて迷い込んだ森の中に、すぐに「Lost Time Cafe」を見つけられるようになった。私にとって、そのお店は、幸せな時間を過ごすところになっていた。


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