ある晴れた日、私は散歩をしていた。公園を抜けたところで、しばらく人通りの少ない道に入った。そこで、ふと目の前に現れた男に足を止めた。
男は年配の方で、柄の良い帽子にスーツ姿。私に気付くと、にっこり笑って挨拶をしてくれた。
「こんにちは、お天気がいいですね」と言うと、男は「そうですね、散歩には最適な陽気です」と返してくれた。
ちょうどその時、私の目の前を通った柴犬に男はニコニコしながら声を掛けた。
「おい、可愛い犬だな。君の犬か?」
そこで私は、「いいえ、僕は犬を飼っていません。ただ、この犬は可愛いですね」と答えた。
それで、男は「そうか。でも、自分は犬を飼っているんだ」と言って、思い出話をしてくれた。
話は、男が若い頃に飼っていた犬のことだった。男は、犬が彼にとって「家族のように大切な存在」であったことを、語り始めた。
「あの頃は、毎日のように犬を抱えて山へ行ったものだ。今考えると、その時間が本当に幸せだったと思いますね」と男は、自分の思い出を振り返っていた。
私は、男の物思いに触れた瞬間、彼の言う「幸せ」を感じることができた。思わず、私も自分の思い出話を話してみた。
それから、私たちは辺りの景色を愛でたり、昔の話をしたりしながら、長い時間を過ごした。
最後になって、男は「よかったら、また話を聞かせてくれるかい?」と言ってくれた。
私はうなずき、散歩を再開した。だが、もう一度彼に会えることを楽しみにしていたのだ。
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