私は北海道の大雪山に住む山小屋の管理人です。今冬は何と言っても積雪量が異常に多く、また気温が極端に低い日が続いています。
山小屋に泊まる人は、雪と氷と寒さに振り回されながらも、北海道の豊かな自然を求めてやって来るものです。しかし、ここ数週間は、深夜から明け方までの吹雪のため、外出することができる方も少なくなりました。私自身も、館内の雪かきや暖炉の手入れに追われ、長時間の外出は避けられません。
ある日、一人の女性がやって来ました。彼女は、12年前に恋人を亡くし、その悲しみに打ちひしがれて山に入り、意図的に社会とのつながりを断って生活しているという人物でした。彼女は私に、山小屋を一つだけ貸し出してほしいと頼みました。
「何の用事があって、ここに泊まる必要があるんですか?」と尋ねると、彼女は「ある物を探しに来たの。それが見つかるまで、ここにいさせてほしい」と告げました。
彼女がどのような物を探しているのか、私には分かりませんでした。しかし、女性が心配そうな顔をしていたので、一晩だけ貸し出すことにしました。
翌日、私は女性の顔を見ることができませんでした。彼女から一言も話し掛けられず、私は彼女が心配でしたが、何もできませんでした。
数日後、私は彼女が私を探しているのを見つけました。私が彼女に話し掛けると、彼女は私を導いて数キロメートル先の麓まで連れて行ってくれました。彼女が探していたのは、亡くなった恋人が捨てていったという物でした。
私は女性に、麓から戻った後、感謝の気持ちを込めて夕食をご馳走し、泊まりを無料で提供しました。その日以来、私たちはしばらくの間、とても仲良くなり、心が通じあいました。
彼女は、失ったものを取り戻そうと必死で静かに自分自身を支えていたようでした。そして、自然の大きさを目の当たりにして、問題がどの程度小さかったかを理解し、その後の人生を見据えることができるようになったようでした。
冬の大雪山で、彼女は自分の生き方について悩みながら、私たちを通してたくさんのことを学びました。私たちも彼女からたくさん学び、ともにすごした時を思い出にしています。
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