ある日、漱石と夏目は夕食を共にした。二人は良き友人でもあり、著名な文学者としても知れ渡っていた。食事の途中、夏目が漱石に問いかけた。
「漱石、あの時の小説はもう書き上がっているのか?」
漱石は苦笑しながら答えた。
「いや、まだ書き終えていないんだよ。僕の作品にはとことんこだわるタイプなんだ。」
夏目はそれを聞いて、嬉しげに笑みを浮かべた。
「そうか、私も同じだね。でも、君の作品にはいつも感心させられるよ。特に、『草枕』は本当に素晴らしかった。」
漱石は頬を赤くしたが、謙遜する気持ちを隠すことはできなかった。
「いやいや、そんなことはないよ。そう言ってもらえると、とても光栄だよ。」
二人は食事を続けながら、文学について熱心に語り合った。彼らの会話は深く、また洗練されたものであった。
その後、二人は静かに散歩をすることに決めた。外は暗かったが、星は輝いていた。漱石は短い一瞬、夜空を見上げた。
「夏目、君と話すと、いつも勉強になるよ。やっぱり、君は才能があるんだね。」
夏目はにっこりと笑い、漱石に向き直った。
「ありがとう、でもそれは互い様だよ。今でも、『こころ』は僕のお気に入りの一冊だ。」
漱石は微笑み、その別れ際に言った。
「また近いうちに会おう。お互い、作品を完成させるためにも、それが必要だね。」
夏目はうなずき、心の底からそう思った。
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