迷子

私は迷子になってしまった。

道に迷ったのはこれが初めてではないのだけど、今回はどうにも方向がわからなくなってしまった。

スマホの地図アプリも役に立たず、周りを見渡してもどの建物も見覚えがない。

不安にかられながら歩いていると、小さな公園を発見した。

ベンチに腰かけて、落ち着くために深呼吸をした。

すると、公園の隅っこにある小さな建物が目に飛び込んできた。

「多目的トイレ」と書かれている。

私は思わず小さくため息をついた。

トイレに入っても、どうしようもないじゃないか。

だけど、ここにいる間に少しだけ気持ちが落ち着いた。

「あの、お嬢さん大丈夫ですか?」

私は振り返ると、不思議そうな表情をした男性に声をかけられた。

「ちょっと道に迷ってしまって……」と、私は小さく話した。

男性はすぐにスマホを取り出し、地図アプリを開いて私の目の前で指を動かした。

「こちらの方向に進んでください。公園の先に大通りが出ます。そこから右に曲がってください。そうすればもう、大丈夫ですよ」と男性は笑って、私に教えてくれた。

私はありがとうと感謝の気持ちを込めて男性に頭を下げると、トイレを後にした。

公園を出ると、目の前に大通りが広がっていた。

「あそこで右に曲がるんだ。わかった!」

私は力強く言い聞かせた。

しばらく歩くと、見覚えのある建物が目に入った。

私はほっと胸をなでおろし、思わず笑みがこぼれた。

男性のおかげで、私は迷子から無事に脱出することができた。


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